クングスレーデン: トレッキングガイド前編 – ルート選択
コース
クングスレーデンは、 スウェーデンの北端にある、 スケール大きい氷河地形が続く、世界有数のトレッキングルートです。北極圏に位置し、夏は夜も明るい白夜が続き、いつ歩いても自由です。どこでテントを張ってもよく、どの小川の水も飲めます。
クングスレーデンには、北のAbiskoからSingiで東に折れてNikkaluoktaに抜ける北部の110kmのルートと、Singiからそのまま南のHemavanまで進む全長450kmのルートの2つがあります。
全体を通して歩くハイカーはスウェーデン人にも少なく、北部のNikkaluoktaに向かうルートが人気となっています。私も今回、この110kmを1週間歩きました。
全体を歩くか、北部を歩くか
全体を歩く場合のポイントは、2点あると思います。
1点目は補給。中間地KvikjokkからJackvikkまでの4泊5日間、売店がありません。この区間は、食料と燃料を運ぶ必要があります。
2点目はサウナでしょうか。2020年のシーズンは、コロナウイルス対策として、山小屋のサウナが閉鎖されています。数日間歩いていると、ズボンを脱ぐと股間から香しい香りが立ち上ってきます。北部1週間なら、そのまま歩き切ることもできるでしょう。スウェーデン人の中には、小雨の降る中凍えそうに身を縮めながら川で水浴びしている人もいました。
一方、北部110kmの1週間でもかなりのボリュームがあり、クングスレーデンの核心部を満喫できると思います。
アビスコから歩くか、ニッカルオクタから歩くか
結論から言うと、どちらから歩いても良いと思います。途中で出会うハイカーも、南向きと北向きと、同じくらいの人が居た気がします。
私は、クングスレーデンを南に歩き続ける可能性も想定し、北のAbisko側から歩き始めました。実際には東に抜けましたが、ゴールのNikkaluoktaはトレッキングの汚れを落とすのに良い場所でした。一方、 Abisko にもマウンテンステーションがあります。
歩きはじめの標高も、 Abisko が380m、 Nikkaluokta が460mと、同程度です。
南から北に歩くと、太陽を背中に受ける格好になり、写真を撮る際に逆光になりにくい。またバックパックにソーラーパネルを取り付けた場合に発電効率が高い、といったことが言われています。私が歩いた際は、曇が多く、特に違いは感じられませんでした。
クングスレーデンの全長を歩く場合
クングスレーデンの全長は、北から南へ歩く人が多い
クングスレーデンの全長を歩く場合は、北から南に歩く人が多くなっています。
北の Abisko から歩くと、ハイカーの多い区間でクングスレーデンに慣れることができると思います。
ボートに関しては南から
一方、南から歩くと、川をボートで渡る際に、往復する回数を減らせます。
どういうことかというと、川には、ボートが3艘用意されています。たいていは南側に2艘、北側に1艘。北から南へ渡る場合、自分がボートに乗ると、北側にはボートが無くなってしまいます。そのままでは次の人が渡れません。そこで、一度南へ渡ったあと、今度はボートを2艘つなげて北へ漕ぎ戻ります。最後に1艘で南へ渡り直します。合計3回川を渡る必要があるのです。広い川の場合、2時間前後漕ぐことになります。
それに対して南から北へ進む場合、1回漕ぐだけで充分です。クングスレーデンの全体では、複数川をボートで渡る箇所があります。(北部の110kmの区間ではボートを漕ぐ必要はありません)
ハイカーの多い北から慣れる
こういったメリットもあるにしろ、初めてクングスレーデンを歩く方は、どちらかといえば北から歩く方がよさそうな気がします。人の少ない南部にいきなり入るより、人気の北部の110kmの区間から入る方が慣れやすく、この区間だけでも相当なボリュームがあり、充分満喫できると思います。
季節: いつ歩くか
山小屋の開いている期間
山小屋が開いているのは、2020年は6/18~9/20。売店のある山小屋では食料を調達でき、この期間が目安となるでしょう。
各小屋の開設期間は、STFの公式サイトで確認ください。山小屋の名前をフィールドに入れてボタンを押すと、詳細が表示されます。
・スウェーデン観光局STFの公式サイト
・山小屋の売店の取扱品リスト
秋は気温が下がる
また、夏の夜は0~5℃ですが、秋になると-10~0℃に下がります。冬山装備が必要になってくるでしょう。夏の間は夜も明るく、行動時間に制限が無いのも安心感があるでしょう。9月になると、19時頃にはかなり暗くなるそうです。
・スウェーデン北部Kirunaの気温と降水量
(クングスレーデンの最高地点は1150m。Kirunaより数℃気温は低くなります。)
7月は小雨が降る
私は7月中旬を歩きましたが、7日間中6日間小雨が降りました。スウェーデン北部の降水量は、7月がピークで100mmです。東京の梅雨の降水量が170mmなので、その6割になります。8月以降の方が降水量が少ないので、8月下旬頃がおすすめかもしれません。
蚊対策
クングスレーデンは、実は蚊が多いことで有名です。特に樹林帯の中で多く、風の吹く森林限界の上では少なくなってきます。季節的には、寒くなる8月下旬から減ってくると言われています。
・蚊対策については
その他
また8月第3週は、トレイルランニングの大会、フェールレーベンクラシックが開催されます。レースランナーが居るとこちらのテンションも上がるので、よいはげみになるかもしれません。
こういった点からも、私が次回行くとしたら、8月下旬をおすすめします。
テント or 山小屋
山小屋のメリット
クングスレーデンの特徴の一つとして、どこでテントを張っても自由、という点があります。実際にテント泊で歩いたところ、山小屋も良いかな、と実は感じました。
7月中旬は小雨が多く、夕方から朝方にかけて雨が降っていることが多かったです。雨の中テントを撤収するのは少々おっくうになりがちですが、最終日に小屋に泊まった翌朝は、同じ雨でもとても気がラクでした。行動中の雨はあまり気にならないものです。
運動不足の身で、いきなりテント泊縦走装備を担いで歩くと、最初の2日間は修行のようでした。3日目には身体は慣れてきましたが、コースタイムの2割増しの時間はかかりました。軽装でスタスタと追い抜いていくハイカーを横目に、小屋泊まりも良いかな、と感じました。
テントの良さ
一方、テント泊の醍醐味もあります。Tjaktja峠のテント適地は、氷河の造り出した雄大なU字谷が眼前に突然広がる、人生で最高のテント場となりました。Tjaktjaの山小屋は峠の4km手前になり、峠で一晩じっくり過ごせるのは、テント泊ならではと言えます。山小屋泊まりの場合は、日照時間の長さを活かして、峠でゆっくり休憩すると良いでしょう。
同じ装備で数日歩いておくとよい
なお山小屋の場合も、食事は自炊になります。ストーブや燃料を運び、売店の無い山小屋の場合、手前で食料を購入しておくことになります。北部110kmの区間では、TjaktjaとSingiには売店はありません。
日本の山を、同じ装備で数日間縦走できる体力を身に着けてから行くと、快適に歩けると思います。クングスレーデンの傾斜はきつくなく、日本の山を歩ける体力があれば、充分です。
山小屋の間隔は適切
山小屋は基本的には予約制で、STFの公式サイトから予約できます。山小屋の間隔はちょうど1日歩いた間隔に配置されており、途中で迷わなければ、充分歩けると思います。地図上のコースタイムは1日4~8時間となっています。私は2割増しの時間がかかりましたが、夏は日照時間も長く、日没時間に追い立てられることは少ないでしょう。
山小屋2つ分を1日で歩くことは、テント泊装備の場合は、少々チャレンジングかもしれません。旅の途中で出会ったドイツの若者2人組は、テント泊で1日20km以上歩くと言っていました。雨の避難小屋で出会いましたが、まだ雨の降る中、休憩もそこそこに再度歩き始めていました。体力に自信のある方は、2つ分歩くことも可能かもしれません。
クングスレーデンのまとめ情報はこちら。
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